ウメハラが語った。

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2015.11.24、「勝ちたがりTV」に、トパンガAリーグ第5期を優勝したばかりのウメハラ選手が出演しました。話は先日の「闘神激突」から始まり、今回のトパンガリーグへ。そこでのトパンガリーグの振り返りの話がとても面白かったので、記事にしてみました。ウメハラ選手は今回の結果により、トパンガリーグ怒涛の4連覇。リーグ戦での強さは健在です。
下記が、過去のトパンガリーグの結果一覧です。

歴代トパンガリーグ結果   
日時 リーグ名 優勝者
2012.2 TOPANGAリーグ1 ハイタニ
2012.9 TOPANGAリーグ2 ふ〜ど
2013.5 TOPANGAアジアリーグ sako
2013.12 TOPANGAリーグ3 ボンちゃん
2014.4 TOPANGAワールドリーグ1 ウメハラ
2014.12 TOPANGAリーグ4  ウメハラ
2015.4 TOPANGAワールドリーグ2 ウメハラ
2015.11 TOPANGAリーグ5 ウメハラ



単に格ゲーが上手いだけではなく、緻密な戦略を重ねた上にある勝利

巷では、「ウメハラは長期戦に強い」とよく言われます。
では、何故そんなに強いのでしょうか。
「格ゲーの神だから」「天才だから」「ビーストだから」という"安直"な言葉で片付けてしまいがちですが、そうではありません。今回のリーグ戦優勝も、ウメハラさんが格ゲーの神で天才だから優勝したということではなく、緻密に戦略を重ねた上で、やっとのことで勝利を掴んでいるのです。

そこで、今回のトパンガリーグ制覇にあたり、ウメハラさんがどういった思考フローを辿ったのか、下記にまとめました。





目次
1.正しい努力をすること。時間は限られている。
2.ゴールまでの道筋を立てる。
3.優勝候補はツブす。共闘してでも。
4.練習も効率的に。パターンを解体する。
5.時には息をひそめる。"その時"が来るまで。
オマケ.エンタメ性も忘れずに。






1.正しい努力をすること。時間は限られている。

「正しい努力」をしなければ、勝つこと、つまり目的を達成することはできません。「正しい努力」の仕方を見つけることが、本当の勝ちと成功に繋がります。

そのためにどうすればいいか。まずは今、何が問題になっているかを見つけ、その解決方法を考え、対処し、自分なりのロードマップを作っていくことです。それが「正しい努力」であり、「勝ちへの道筋」へ向かうための有効なメソッドなのだと思います。


上記は、以前ウメハラさんが「正しい努力vs間違った努力」というテーマのコラムで語った内容です。今回は、まさにそのコラムの内容の実践の場となりました。トパンガリーグは、まず予選リーグを行い、上位6名を決めます。次にその6名で、最終リーグを行う形式となります。そのため、全体日程としては1〜2ヶ月。その期間で、いかに"正しい努力"ができるかが重要となります。今回も、限られた時間の中で、最終リーグの相手5人への対策を実施しなければいけませんでした。



2.ゴールまでの道筋を立てる。


そのように限られた時間の中で、最大限に効率の良い努力をしなければなりません。そのためには、ゴールまでの道筋を立てることが重要です。
まず、上位6名として勝ち上がったのは、次の6名です。ウメハラ、ボンちゃん、ももち、かずのこ、ネモ、だしお。この相手5人に対して、どのように時間を使うか、それが、優勝への鍵となります。自分が持っているリソースをどうやって分配すれば、最大限の効果を得られるのかを考えます。

そこでウメハラさんは、優勝は誰か、ということに焦点を絞ります。その候補はももちでした。そしてまた、かずのことネモの優勝は無いとも予想しました。なぜなら、彼らは苦手キャラが2人おり、2敗が濃厚だからです。過去、2敗でトパンガリーグを優勝した人はいなかったからです。よって、この2人にはあまり時間を割くべきではない。また、盟友であり弟子のような存在のボンちゃんに対しては、対策に時間を割かなくても絶対に勝てるとウメハラさんは断言します。残ったのはだしおですが、彼の使用キャラがセスということと、だしお自身の性格から、不確定要素が非常に多いと判断しました。その日のだしおの気分次第で、全く戦法が変わってしまい、リスクを背負った読みの勝負に持ち込まれてしまうのです。そういった理由から、彼に時間を割くのは非常に効率が悪いとウメハラさんは考えました。

以上の思考フローから、ウメハラさんはリソースの割き方を下記のように絞りました。


プレイヤー 使用キャラ 比率 備考
ボンちゃん サガット 0% 対策しなくても勝てる。
ももち ケン 90% 優勝候補。
かずのこ ユン 2.5% 厳しい相手だが、優勝はない。
(ももちケン、ボンちゃんサガットに勝てないから)
ネモ ロレント 7% 身近に良い使い手(マゴ)が居て対策しやすい。
だが、優勝はない。
(かずのこユン、だしおセスに勝てない)
だしお セス 0.5% セスとだしおの組み合わせは不確定要素の塊。
対策は雲を掴むような作業で効率悪い。




3.優勝候補はツブす。共闘してでも。


今回のトパンガリーグでウメハラさんが優勝するにあたり、"鍵"となるのが、「優勝候補に勝っておく」ということです。というのも、以前の記事でもネタにしましたが、トパンガリーグはタイブレークになった場合、直接対決の結果で順位を決めるルールになっています。得失点差はあまり意味を成しません。そのため、優勝候補にちゃんと勝っておけば、仮にタイブレークで並んだ場合、優勝候補より上に行けるわけで、優勝の確率が大幅にUPすることになります。そのことから、優勝候補に勝つことを重視しなければいけません。

絶対的なウル4王者、"仮想敵国"ももちの存在

ももちはここ1年程、非常に活躍しており、CapcomCup2014、EVO2015という世界2大トーナメントを制覇している最中です。また、下表のように、カプコンプロツアーポイントでも堂々のランキング1位。実績だけ見るならば、間違いなく現役最強であると言えるでしょう。また、プレイスタイルも隙がないタイプで、守備力に長け、万能キャラで対応してくるという非常に手強いプレイヤーです。レジェンド・ウメハラとAリーグ常連のプロゲーマー・ボンちゃんが口を揃えて、"優勝候補はももち"と断言するにはそれなりの理由があるというわけです。そのため、2人は"共闘"という方法をとります。

カプコンプロツアーポイントランキング(2015.11.29現在)

順位 プレイヤー名 国籍 ポイント
1 EG | ももち 日本 1,374
2 RZR | Infiltration 韓国 1,076
3 RB | ボンちゃん 日本 896
4 RZR | Xian シンガポール 798
5 AVM | GamerBee 台湾 740
6 MD | Luffy フランス 724
7 MCZ | ときど 日本 700
8 RZR | ふ〜ど 日本 610
9 MCZ | マゴ 日本 556
10 MCZ | ウメハラ 日本 546


4.練習も効率的に。パターンを解体する。

対策の時間は限られています。ゆえに効率的に行わなければなりません。ウメハラさんが実践した練習(対策)方法は次の2点。

・自らそのキャラを使ってみる

ケンの対策をしたいなら、自分でケンを使うのが最も効率が良いのです。ケンはどうやってダメージを取るのか、どんな戦法があるのか、何をされたら困るのか、等の必要な情報が、自分でそのキャラを使えばグングン入ってきます。ウメハラさんはボンちゃんと共に、お互いにケンを使って対戦してみるということを徹底して実践しました。

・動きのパターン豊富な対戦相手を見つける

ケンを解体したいなら、長年ケンを使っている人から吸収するのがやはり効率が良い。2人では限界があると悟ったウメハラさんとボンちゃんは、"吉祥寺ケン"に声をかけます。ウメハラさん曰く、これが大当たりだったとのこと。というのも吉祥寺ケンは動きのパターンが広く、試合毎に動きを"変えてくる"プレイヤーだったようです。練習相手がそういった動きをしてくれると、パターンの引き出しがとても増えるのでとても良いそうです。逆に、たとえ強くても動きを変えないプレイヤーは、そのプレイヤーを攻略するだけで終わってしまうため、練習相手としては不適格となります。


ウメハラ「そのパターンは知ってる。そのパターンも知ってる。俺らが既に通った道だ」


こうしてケンを解体し、パターンを増やした2人。ウメハラさんは本番の「ボンちゃんvsももち」の試合を見ている時は、上のようなことを思ったそうです。ここまで徹底してケンというキャラの対策を煮詰めて、ようやく勝利へと繋がるのです。


5.時には息をひそめる。"その時"が来るまで。

ウメハラさんは、ももちを徹底マークして、ケン対策をひたすら煮詰めていたわけですが、そのことは当然ももちには言いません。それどころか、エキシビジョン等でももちと対戦する機会があっても、ひたすら息をひそめ、敢えて負けていたそうです。更には、トパンガリーグのオンライン予選ですら、敢えて負けるという選択をしました(それも0-3で負けるという徹底ぶり)。勝つべき時に勝つために、どうでもいい試合はひたすら負けるという選択肢を取ったのです。ケチな点棒拾う気なしということでしょう。しかし、ウメハラさんはその時期は非常に辛かったと言います。格闘ゲーマーですから、やはりどんな試合だろうが勝ちたいと思ってしまうものです。



オマケ.エンタメ性も忘れずに。

トパンガリーグの最後の最後まで鳴りをひそめていたウメハラさんですが、トパンガリーグ最終戦では、打って変わって強気の発言をします。

ウメハラ「ここ1、2ヶ月、ずっとケン戦を詰めてきた。スト4を通して、これ程の完成度はかつてない」
本来であれば、この一言は言わなくても良い言葉です。そんなこと言えば、ももちが急に警戒するのは当然ですし、どうせなら油断させたままの方が良いに決まってます。しかし、そうはしないのがウメハラさんの美学でもあり、レジェンドたる所以なのです。


ウメハラ「最終戦、最高のお膳立てが整った。俺はここに賭けて来たし、ケン戦はひたすらやってきた自信がある。それなのに、ただ、"頑張ります"みたいなコメントをするのは何か違う」


それまでは、ひたすら鳴りをひそめていたにもかかわらず、最後の最後で強気のネタばらし。当然発言のリスクを背負うことになります。これで負けようものなら、かっこ悪いことこの上ありません。しかし、この発言をすることで、会場からは歓声が上がり、見ている側は断然盛り上がります。他のスポーツや格闘技でもそうですが、選手の謙虚な発言なんて退屈ですよね。強気に相手を挑発するくらいの方が、やはり見ている方は盛り上がるものです。このエンタメ性こそが、ウメハラさんが長年ファンを増やし続けてきた理由です。





結果

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対ウメハラ戦の結果 

xネモ 4-7 身近に良い使い手は居たが、相手の巧さが想定を遥かに上回った。
xかずのこ 1-7 仕上がりが異常だった。動きを変える賭けに出たが、結果は大失敗。
oだしお 7-2
oボンちゃん 7-1 やっぱり弱かった。
oももち 7-3 対策が実った。

トパンガAリーグ最終結果

順位 プレイヤー名 勝敗 得失点
1 MCZ | ウメハラ 3勝2敗 +6
2 RB | ボンちゃん 3勝2敗 -2
3 EG | ももち 3勝2敗 -1
4 かずのこ 3勝2敗 +7
5 ネモ 2勝3敗 -1
6 だしお 1勝4敗 -9


結果として、ウメハラさんの狙いから外れた部分もありますが、優勝候補を倒しておくことの重要性は見事的中し、4人がタイブレークで並ぶ自体となりました。 そして、直接対決の結果を比較し、見事、ウメハラさんの優勝となったのでした。特に、ももちに黒星をつけたのは、徹底して対策をしたウメハラさんとボンちゃんだけであり、この2人が共闘しなかったら、あっさりももちが優勝して終わりだったかもしれません。







いかがだったでしょうか。
ウメハラさんと言えば、地上戦やウメ波動、鳥カゴ等の華やかなプレイに目が行きがちですが、今回のような戦略性の高さこそがウメハラさんの真骨頂かもしれません。


そして、格闘ゲームで強くなる方法、大会で勝つことができるようになるためのノウハウがたっぷり詰まった非常に面白い配信でした。勝ちたがりTVとウメハラさん、ありがとうございました。


 





その他、ウメハラさんの書籍はこちら↓



   
   勝負論 ウメハラの流儀 (小学館新書)


  1日ひとつだけ、強くなる。 世界一プロ・ゲーマーの勝ち続ける64の流儀


   勝ち続ける意志力 (小学館101新書)





元ネタ

勝ちたがりTV #168 第5期TLを終えて ゲストウメハラ (1/5) 2015.11.24

勝ちたがりTV #168 第5期TLを終えて ゲストウメハラ (2/5) 2015.11.24

勝ちたがりTV #168 第5期TLを終えて ゲストウメハラ (3/5) 2015.11.24

勝ちたがりTV #168 第5期TLを終えて ゲストウメハラ (4/5) 2015.11.24

勝ちたがりTV #168 第5期TLを終えて ゲストウメハラ ランクマ(5/5)2015.11.24

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